Rokuro-3は、前作「Rokuro-2」およびその前作「均衡/Rokuro」より続くシリーズで、動作は基本的には同じである。中央の素材は、三菱レイヨンのプラスチックファイバー「エスカ」で、高速に回転させることで、視覚的にも触覚的にも錯覚を味わうことができる。
見ていただいた人には、「CGのようだ!」「シャボン玉に見える」「レーザー光線を曲げているようだ」などと、不思議な球体に多くの感想をもらっている。このページには私が触っている写真しかのっていないが、実際には観客にも触ってもらっている。本作は陶芸における轆轤(ろくろ)を意識しており、手で触れることでただの球体が複雑な形体に変化する。
基本的なシステムは「Rokuro-2」のものを使用しているが、操作感をより簡単にするために、足での操作ではなく腰につけたコントローラで行うように変更した。本コントローラはXBeeを使用し、無線化。内部に加速度センサと距離センサを持っており、以下の関係で形体に影響を与えている。コントローラの入力には、一つのキャリブレーションボタンだけあり、装着後押すことで、相対的な位置を決定する。
腰の左右の傾きによって、回転速度を変化させることができる。範囲は600rpm〜1000rpm。
また、前後の傾きによって、フルカラーLEDの色を変化させる。基準の位置では、一番きれいにみることができる青、前に傾くと青〜黄〜緑になり、後ろに傾くと青〜紫になる。HSBのhue(Satulationは255, Brightnessは255)を255段階で制御し、RGB値に変換し出力する。また、「Rokuro-2」より回転に同期し色を出力することで虹色の球体も表現している。
距離センサは腰の位置から床までの距離を測定している。基本の高さから、上になると端点があがり、しゃがむと端点は下がる。ファイバーの長さは一定なので、たるんだ分だけ球体は広がり直径の大きなものが出来上がる。
鑑賞者が手で様々な変化をおこすことができる。陶芸のような「粘土と手の接点の軌跡により形が作られて」行程をセンサーで取得したデジタル情報を用いて実現する。本作では基本的な形状は腰で作成し、手によって最終的な形体を作り出す。また、プラスチックファイバーは30本を一束としているため、操作によってはバラけることがある。バラけることで疎密な部分ができ、大きな球体のなかに小さな球体がある。陶器と違うところは、透明な物体であるために大小の球体が重なって見えるところである。